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Vol.109 岩尾 憲

vol.109 岩尾 憲 #8『一つになれると信じている。その時が、歴史が変わったと思える瞬間』

まず昨シーズンを終えて、このオフに感じたことや振り返って考えたことは何かありましたか?

「毎年そうしているのですが、振り返ってはいません。それは昨シーズンを振り返らずに次の自分が何をしていくべきか、どうやって成長していくかということを基本的に考えているからです。
ここに残るということを決断した時点で、(昨シーズン最終節での)東京での記憶は残っています。ただ過去から何かを得ることも大事ですけど、自分が成長するためにどう未来を作っていけるかの方が大事だと思っています。そういう意味では、地元の知人なり会った人の言葉やどう思っているかを聞くことで、そういった成長への動機付けになればいいと思っていますし、なっている部分もたくさんありました。」

徳島へ残ることは大きな決断だったと思いますが、大きな決め手は何だったのでしょうか?

「クラブの熱意です。監督とも岡田強化部長とも話をしました。僕の持論では、生きていて誰かに必要されることがものすごく大事なことです。去年昇格できていればそれが恩返しとして成立したと思いますけど、何も残すことができなかった。そういうことを踏まえた中で、何も残せていないにもかかわらず僕を必要としてくれる言葉や話す機会を作ってくれた監督やクラブに感謝していますし、このクラブはまだまだ良い方向に変わっていけると信じています。
志半ばでクラブを去った人もいるでしょうし、もっとここでやりたかったと思っていた選手もたくさんいると思います。みんなここでやりたかったと思っている中で、このクラブを作り上げてきた選手だけではなくて多くの関係者の方に、結果で恩返ししたいと思いました。去年結果が出せなかったことは僕自身心残りだったし、それを達成できていないということと、クラブが残ってほしいと熱心に話してくれたことが大きかったです。
考え方によっては、居心地が良い方を僕が選んだとか楽な道を選んだと思われることもあるのかもしれませんが、僕自身はむしろ逆に思っています。去年7位に終わって、おそらくほとんどの人が監督も変わっていない、選手もそれほど入れ替わっていない中でだいたい7位くらいまでやってくれるだろうと思っている。そういう状況でサッカーをすること自体やりがいがあると思っていますし、僕らも去年下位のチームに負けましたがJ2は下位のチームが必ず負けるような甘いリーグではありません。そういう意味では、僕らのサッカーも研究されている中で、去年よりもはるかに難しいシーズンになると自分の中でも思えていたので、より難しい方を選んだつもりです。」

昨年一年間初めてキャプテンを務めましたが、キャプテン像というのは何かありますか?

「いろいろな人を見てきたので、プレーで引っ張っていくとか言動しかり姿勢しかり、キャプテン像はあることはあります。ただそれをそのままやったら俺じゃなくていいと思っています。今までにないこんな人いなかったというところを目指してやりたいと思っているので、これから作っていくのかもしれません。」

昨シーズン、岩尾選手の言動や行動が、少なからず徳島県民やファン・サポータの皆さんにインパクトを与えたシーズンでした。そういった実感はありますか?

「いろいろな人から「ありがとう」とかキャプテンとして評価の言葉をいただくことはありますが、それは人が決めてくれればいいことです。自分のやっていることが必ずしも正解とは限らないし、何が正解かわからない中でより良くしていこうということだけ軸をぶらさずにやっています。達成感もないですし、まだまだやらなくてはいけないことがあると思います。」

「歴史を変える」というキャプテン就任時のコメントが反響を呼んでいますが、その発言の真意は?

「このクラブに残ると決めた時点で、「自分が成長する、クラブがより良くなるため自分に何が出来るか?」ということを考えていました。
キャプテンとして、誰でも出来るようなこと、ただピッチでプレーすることだけでなく、残るからには何かをこのクラブに残したいという気持ちがあります。もちろん選手が結果を出すことが大前提にあることは深く認識しています。
しかし、極端なことを言えば無観客試合でプレーすることは当たり前だけど本望ではないし、そこに結果がついてくるとも思えません。
例えば、学生の頃のように合唱コンクールでクラスが一つになって、男性も女性も一緒になって一つのことを作り上げるということが大人になってなかなかそんな場所も機会も、ましてやする必要のない環境が9割9分あるのではと思います。
合唱コンクールで優勝を目指すそのクラスの中には、歌うモチベーションが無い子や優勝したいと思っていない子が数名いるとしますよね。このクラスが優勝できると思いますか?
この例えで言うと、優勝したいと思って取り組むクラス数十人が作り上げる合唱に、もしかしたらすごく多くの人が感動する可能性を秘めています。
このような考え方が(徳島県民の)皆様と共有できれば、合唱コンクールの数十人だけでなく、大人や子供を含む数千人単位の人が「このクラブをより良くしていこう」と思えば、合唱コンクールで優勝出来ること以上のようなすごく大きな存在、また魅力的なクラスメイトのような存在になれると思っています。
そんなクラスになれたなら、その先にまだ誰も見たことのない、感じたことのない感動を生むことが出来るのではないかと思います。
そのためにクラブ・スタッフ・選手・サポーター、そして徳島県民の皆様が、まさに一つのクラスのようになれると信じているし、そうなれた時、歴史が変わったと思える瞬間だと思います。
そういう意図を持ってこの言葉を選びました。」

始動して1カ月以上が経ちましたが、ここまでで思い描く2018年は?

「思い描いているようなことは一年単位ではないです。納得できないことはその日のうちにやろうと思っていて、一日一日大事にするとみんな言いますけど、一日一日何かを見つけたいと思っていますし、一日一日を100持っているものを限りなく100出して、または110、120出さないと結果がでないと去年学びました。時に俯瞰で、時に主観で、時に客観で、しっかり洞察することが大事かなと思います。」

キャンプを通して新加入選手などに積極的に話かけていましたが、今年のチームはどう感じますか?

「非常に甘えやすいです(笑)。順位が7位だったことを脳裏のどこかにあると感じます。リカルド監督がいるからあれくらいのサッカーができるとか、あのくらいの順位にはいけると謎の自信と感覚がみんなの中に少しずつあって、それがピッチに出ています。リカルドが監督だからあのサッカーができたわけではないし、一年目に監督が来て、何をやるかわからない中でそこで競争を始めて誰が出るかわからない状況の中で、全員が切磋琢磨して競争して理解する頭をしっかりもって一年間やりましたが、それでも昇格できませんでした。そういうことを考えると、2年目のジンクスと言われるような、2年目に結果が出ない理由はそういった油断や不確定なものに惑わされるというか、そういう傾向があるなと僕はすごく感じました。宮崎キャンプの前に軌道修正できたのはよかったですけど、そういう意味でも比較的甘えやすいチームかなと思います。」

最後に、岩尾選手個人として今年一年はどういった位置づけですか?

「『もう2度と戻りたくない』一年にしたいと思います。去年その感覚でやっていたんですけど、このチームでもう一年やりたいと問われた時に、もうできないと思うくらいやったつもりですし、そういう意味では7位という順位には満足していないし、応援してくれた方に本当に申し訳ない気持ちが本当にたくさんあるけど、やりきったという意味では後悔はしていません。
今年さらに難しくなるということは、皆さんの期待値も含めて、さらにやらなくてはいけないしさらにプレッシャーは大きくなる。結果にフォーカスできるように、去年やったことを今年もするのではなくて、さっき言ったキャプテン像も含めて、こんな選手こんなチーム過去にないと思ってもらえるような集団にしていきたいし、自分もその中で成長していきたい。そして結果を出してみんなで喜んで終われるように、2度と来なくていいようなシーズンにしたいと思います。」

もう二度と来なくていいと思える、そんなシーズンに。

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