Vol.74 アドリアーノ
日本が好きだから
Jリーグに戻ってきた
2010シーズンにセレッソ大阪、2011シーズン途中までガンバ大阪でプレーしていたアドリアーノ選手。“日本が好きだったから日本に戻ってきた”とJリーグへの復帰を喜んでいる。家族連れが多く、スタジアムの雰囲気がとてもよい所も日本を好きな理由だと語る。
「スタジアムで子どもの姿を見ると、もっと頑張ろうという気持ちになるんです。僕も子どもの頃、スタジアムに行っていたので気持ちが分かりますし、これから日本のサッカーを成長させるのは子どもたちですから。それに子どもたちにとって、きっと僕たち選手はアイドルでしょう。見本となるようないいプレーを見せたいと思いますし、ピッチの中だけでなく生活もきちんとしなければいけないと思っています」
ブラジル出身のアドリアーノ選手がサッカーを始めたのも子どもの頃だ。
「生活が苦しかったのでスパイクを買うお金がなく、裸足でサッカーをやっていました。サッカースクールに入って学校の大会に出るところから始めて、ビッグクラブに入るまで本当に時間がかかったし、苦しいこともたくさんありました。でも、自分の頑張りやまわりのサポートのおかげで、今はこうやって日本のクラブでプレーができるようになり、家庭を持つこともできた。今後は自分の子どもにもサッカーをさせたいですし、子どもの将来のためにも頑張りたいです」
サッカーを始めた子どもの頃から、プレースタイルは変わらないと笑う。
「ボールを持ってドリブルで仕掛けるのが好きでスピードもありました。昔はボールを持ったらボールを失わないようにすぐ後ろの選手にパスを出していたんです。でも、ある時、監督が練習を止めて“それではゴールに行けないよ。ボールを持ったら必ず仕掛けてみなさい”と。それからボールを持ったら必ず前を向いて仕掛ける、今のプレースタイルになったんです」
日本のサッカーを
経験したから得点王になれた
ブラジルのトップクラブとして知られるインテルナシオナルで、プロサッカー選手としての才能が開花。その後、スペインのマラガで初めて海外に移籍する。
「ずっとビッグクラブでプレーすることを夢見てきましたが、まさかバルセロナやレアルマドリードと試合ができるようになるとは思っていなかった。思っていたより早く夢が実現できたのは、常に上をめざして頑張ってきた結果だと思います」
その後はブラジルのヴァスコ・ダ・ガマからセレッソ大阪へ。翌シーズンに移籍したガンバ大阪では、シーズン中にカタールのアル・ジャイシュSCに移籍する。
「ガンバからカタールに移籍する時はとても悩みました。試合にコンスタントに出ていましたし、7試合で9得点決めるなど、調子もよかったからです。日本のサッカーや生活が好きだったので、残れるなら残りたいという気持ちも強かった。でも、魅力的なオファーをもらい、年齢的なことも考えて、カタールでチャレンジすることを選びました」
その後、アル・ジャイシュSCから移籍したカタールSCでは加入した年の得点王にも輝いている。
「得点王になれたのは、日本でプレーをしたおかげだと思っています。カタールのサッカーはどちらかというとゆっくりなんです。だから、日本のスピーディーなサッカーの経験が生きたのだと思います。カタールでは暑さなど克服しなければいけない問題もありましたが、そんな中、1年目で得点王を獲ることができたのは忘れられない思い出です」
ヴォルティスへの加入が3シーズンぶりのJリーグでのプレーとなるが、カタールのシーズンが5月に終わり、オフ期間中の移籍となったため、難しい部分も決して少なくなかった。
「チームと一緒の練習に加え、別メニューでの練習もこなして1日も早く試合に出られるようにコンディションをあげてきました。以前、日本でプレーしていた時と同じように活躍するためにも、早く日本のサッカーに慣れ、チームの考え方やシステムを理解したいなと。選手とも積極的にコミュニケーションをとって、自分が何をすればチームのためになるのかを第一に考えてきました。ブラジルにいた頃は、日本の人は誰も自分のことを知らなかったと思いますが、今はセレッソやガンバにいたアドリアーノとして覚えてもらうことができました。今度はヴォルティスのアドリアーノと覚えてもらえるように長く、日本でプレーしたいと思っています」
プレーヤーとしても、
人としても成長し続けたい
現在32歳のアドリアーノ選手。まだ感じたことのない自分の限界を超えるまでプレーをしていきたいと語る。
「“もう32歳”と思ったことはないし、まだまだトップレベルでやっていく自信があります。やれることはたくさんあるし、プレーヤーとしても人としても成長し続けたい。ずっと上を向いて、1つの目標を達成してもまた次の目標をめざして頑張りたいです」
まずは1試合でも早く得点をすることが目標だ。
「チームの力になるためにヴォルティスに来たわけですし、仕掛けていって得点するのが僕の仕事です。チームの勝利のためにはゴールが必要なので、自分としては常に1得点ではなく、2得点を狙って試合に臨んでいます。今は最下位で失うものは何もないわけですから、選手、監督、スタッフが一緒になって戦っていくしかない。毎日トレーニングをしていて強く感じるのは、決してこの順位に甘んじているようなクオリティのチームではないということです。それだけにチャンスもあると思うので、自分も限られた時間の中でいい仕事をしていきたい。助っ人と表現されることがありますが、どんなに強力な助っ人でも1人では何もできません。チーム全員で力を合わせ、状況を変えていくことが大事です。チャンスがある限り、全力で戦っていくことが結果につながると信じています」
*文中の情報はインタビュー時点のものとなります。