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Vol.89 エステバン

“強い気持ちで一緒に戦おう” と伝え続けた

ホーム最終戦となった11月14日の第41節ロアッソ熊本戦終了後に発表された「2015徳島ヴォルティスMIP」に選ばれたエステバン選手。これはサポーターの投票によって、シーズンを通じて最も県民に強い印象を与え、「徳島」のPRに貢献した選手に贈られるものだ。
「サポーターから選んでもらったことはとてもうれしいです。でも、目標だったJ1昇格を達成できなかったことが残念でなりません。選手もスタッフも1年間、目標に向かって頑張ってきたのですが、結果的にはプレーオフにも進出できず、悔しい気持ちでいっぱいです」

ヴォルティスがJ1に昇格した2014シーズン途中、なかなか勝てない状況が続いていた7月に加入した。
「頑張って昇格を勝ち取った勢いを失うことなく2014シーズンに入り、一生懸命戦ったものの、結果的に1シーズンでJ2に降格となってしまいました。シーズン終了時はメンタル面でのダメージが大きかったように思います。それでも今シーズンのキャンプではみんなJ1復帰への強い気持ちがあり、内容もよかった。それが前半戦はわずか3勝という苦しい結果になってしまったのは“さあ、行こう!”という気持ちへと完全に切り替えられなかったメンタル面が一番の理由だったと感じています。練習でも試合でもピッチに入ったら何よりも強い気持ちが大切ですし、そうでなければ勝つことはできないんです」

苦しい戦いが続いた昨シーズン、そして今シーズンも、エステバン選手がチームを引っ張ってくれたと語る選手は多い。
「昨シーズン、自分のスタイルである気持ちでプレーするサッカーを実践し、苦しい状況にあるチームを盛り上げたいと思ってヴォルティスに来ました。ずっと“強い気持ちで一緒に戦おう”と声をかけてきましたし、プレーの面では攻撃であっても守備であっても全員で取り組むということを一生懸命伝えてきました。次第に選手やスタッフの意識も変わっていったと感じています」

自分が変わったことで
人間としても成長できた

加入した2014シーズンは14試合に出場し、得点ゼロだったが、今シーズンは30試合に出場し、2得点を挙げた。ほとんどの試合でフル出場を果たし、活躍した背景には、エステバン選手自身の大きな意識の変化があった。
「昨シーズン、チームに来た時はこうでなければいけない、こういうプレースタイルは自分には受け容れられないと決めつけてしまう面がありました。実際、これまでプレーしたチームでは助っ人として期待されていたので、どのチームでも自分のやり方を貫きやすかったんです。でもヴォルティスは違いました。自分のスタイルが一番じゃないんだと気づかされたことで、サッカー選手としてはもちろん人間としても成長できました」

今でもエステバン選手が忘れられないという場面がある。昨シーズン、勝てない状況が続いていた時期のミーティングで、監督や選手を前に「そのやり方は違うんじゃないか?」と真剣に思いをぶつけたのだ。
「試合に負けた後で僕はすごく悔しかった。まわりの選手たちが落ち着いているだけに “何でそんなに冷静でいられるの?”と怒りでいっぱいでした。でも、あの時は加入したばかりで、チームのスタイルを何も理解していなかったんです。その後、チームの考えを変えようとするのではなく、自分がそのスタイルを理解して変わらなければダメなんだと気づきました。だから、今シーズンは自分のこだわりやプライドは捨てて、監督やチームのやり方に従おうと決めたんです。監督のスタイルを理解するのは決して簡単なことではなかったし、我慢が必要な時もたくさんありました。でも、そうしたことによって自分の調子もよくなり、試合にも出られるようになって、最終的には自分のサッカー人生の中でとてもよいシーズンになりました」

今シーズンは久しぶりにサイドバックも経験し、これまでの守備に加え、攻撃の役割も担うようになった。
「サイドバックに挑戦した時期にJ初ゴールを決めた第16節ジュビロ磐田戦が一番印象に残っている試合です。新たな役割を求められていた中でボールを奪ってゴールを決めることができて、チームメイトもサポーターもとても喜んでくれた。あの瞬間の喜びは忘れられません」

サッカー人生で一番印象深い日本での日々

エステバン選手は、11月28日に引退を発表し、ファン・サポーターへの感謝の気持ちを伝えた。
「引退は簡単な決断ではありませんでした。長い間サッカーをやってきたので、毎日、みんなと練習できなくなるのは寂しいですし、すばらしいサポーターの前で試合ができなくなることは苦しいことです。でもこれからは神様のために生きていきたいと思っています。コロンビアは貧しい国で、普通に生活できない人がたくさんいるんです。私は神様のおかげでサッカーができて、今のような生活ができるようになりました。今後は色々なことを勉強して、コロンビアの人たちを助けたいと思っています」

コロンビアや韓国のチームでプレーし、コロンビア代表経験もあるエステバン選手は、2013シーズンに来日。ヴィッセル神戸でプレーした後、ヴォルティスに加入した。
「これまで色々な国の様々なチームでプレーしてきました。優勝もしたし、タイトルも獲ってきましたが、サッカー人生で一番印象深いのは日本に来てからの日々です。日本では優勝もしていないし、タイトルも獲っていませんが、それよりも大切な友達ができたし、優しい人たちと一緒に過ごすことができました。私の妻や息子も日本に来てよかった、日本ではお金では買えないものを手に入れられたと話しています。ヴォルティスではチームが勝てない状況が続いても、たくさんのサポーターがスタジアムに来てくれました。これは本当に幸せなことです。最後まで応援してくれたサポーターのことは、これからも絶対に忘れられないですし、感謝の気持ちでいっぱいです。これまでビッグクラブをはじめ、色々なクラブを見てきた私が感じたのは、徳島ヴォルティスというクラブではすべての人が一生懸命に仕事をしているということです。この先、簡単にはビッグクラブになれないかもしれません。でも一段ずつステップアップしていくことで、ビッグクラブになった時にはきっと長くトップでいられるクラブに成長していると信じています」

最後まで応援してくれたサポーターのことは忘れない

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