徳島ヴォルティス

美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム事業総括報告書の公表について

クラブ2025.04.28

 徳島ヴォルティスが、美馬市様及び大塚製薬株式会社様と連携し、Jリーグクラブ初となるヘルスケア分野のソーシャルインパクトボンド(SIB)※1として2019年度から5年間取り組んできました、ヴォルティスコンディショニングプログラム事業について、このたび、株式会社日本政策投資銀行および同銀行グループの株式会社日本経済研究所との連携により事業総括をおこないましたので報告書を公表します。                              

※1 民間資金を活用して社会課題解決型の事業を実施し、その成果に応じて地方公共団体が対価を支払うスキーム。(経済産業省資料より)

【報告書の要点】
(1)参加者数
参加者数の目標1,800人に対し、新型コロナの影響もあり、実参加者数は710人でした。(延べ参加者数は1,279人で、最多参加回数は13回、最高齢参加者は87歳)
(2)成果指標の達成状況
「成果連動型支払い」の基準としていた2つの指標については、いずれも5年間のトータルでは目標値を上回りました。(目標値を下回った年度があったため、成果連動型の支払い額は予定額3,000千円に対して、2,892千円でした。)
〈成果指標〉
① プログラム開始時に運動習慣(1日30分以上、週2回以上)のなかった参加者のうち、プログラム修了後に運動習慣を持つようになった者の割合【運動習慣の改善】
② 65歳以上のプログラム参加者で、厚生労働省「介護予防マニュアル改訂版」に示された基本チェックリストにおける運動器の機能に5項目中、プログラム開始時に3項目以上に該当した者のうち、プログラム修了後に2項目以下に改善した者の割合【基本チェックリストの改善】

(3)成果指標以外の成果
① 事業期間中のアンケート調査結果
・プログラム参加者に対して、参加前と修了から3週間後にアンケート調査を実施し分析した結果、参加者の体調、健康満足度、運動習慣は有意に改善しており、肩こりや腰痛についても改善傾向が示されるなど、QOLの向上につながっていることが確認されました。
② 事業終了後アンケート調査結果※3
・プログラム修了後、運動習慣が継続している者のうち、半数がコンディショニングトレーニングを継続しており、運動習慣の定着にコンディショニングプログラムが貢献していると評価できます。
・プログラムの満足度を1~10でたずねたところ、回答者の7割以上が「7」以上の評価をしており、事業終了後も高い満足度を維持しています。
・ほかにも、メンタルや自己肯定感の向上、交流機会や外出・交流機会の増加、健康や市の政策への関心の高まりも確認されています。※4                              ③ 参加者ヒアリング調査結果
〈参加者〉
・ 「先進的な取組で誇らしい」、「名物になってほしい」という意見が複数あるなど、郷土愛やシビックプライドの醸成という効果があったことが推察されます。
〈徳島ヴォルティス・大塚製薬〉
・徳島ヴォルティスにおいては、収益を得て事業継続したことで、地域貢献活動の価値を可視化することにつながったことや、クラブのファン獲得につながったと評価しています。
・大塚製薬においても、事業を通じて、自社の製品やサービス、サステナビリティ活動などへの理解促進につながったと評価しています。
〈美馬市〉
・市の政策への理解や他事業の認知度が向上するとともに、修了者による新たなコミュニティの形成や「市民が市民に対してコンディショニングを普及する」新たなチャレンジにつながっていることを評価しています。

※3 事業終了後アンケート調査を令和6年8月に実施。プログラム実参加者710人のうち、転出者等を除く659人に対してアンケート調査票を配布しました。(回答者357人(回答率54.2%))
※4 プログラム修了者3人と美馬市職員に対して、令和6年11月に対面ヒアリングを実施するとともに、徳島ヴォルティスと大塚製薬に対しては、令和7年2月に対面およびwebにてヒアリングを実施しました。

(4)財政効果額
事業開始前に見込んでいた市の財政効果額4,476,582円(医療費:185,444円、介護給付費:4,291,138円)の算定方法に、実績値を当てはめると、2,229,000円(医療費:116,000千円、介護給付費:2,113,000円)となりました。
新型コロナの影響で、参加者数が目標の4割程度にとどまったことなどで、医療費、介護給付費とも見込みを下回りました。(成果連動型支払額2,892千円>財政効果額2,229千円)
なお、医療費・介護給付費そのものの抑制額は、7,887千円(医療費:1,936,000円、介護給付費:5,951,000円)と計算されています。

(5)SIBとしての意義

【スポーツ庁長官・Jリーグチェアマンからのコメント】

◎ 室伏広治スポーツ庁長官
美馬市の取組は、トップアスリートのコンディショニングの手法を用いた運動プログラムを市民へ提供し、運動器の改善等を通じて運動習慣の定着化、QOLの向上等が具体的に図られており、すばらしい取組だと思います。
また、この取組を通じて、市民のライフパフォーマンスの向上につなげている点も高く評価できると思います。
運動・スポーツは、心と身体の適応能力を高め、困難に直面したときにもそれを乗り越える力(ライフパフォーマンス)を育むことができます。また、ライフパフォーマンスは、私たちが活力ある日々を過ごすことができ、より健康的で充実した社会を作るために必要な要素です。
今後も引き続き、コンディショニングを通して運動習慣を定着させることで、仕事や日常生活での生産性を維持・向上し、市民が充実した毎日を送ることにつながるよう、取組を継続・発展させていただくことを期待しています。

◎ 野々村芳和Jリーグチェアマン
徳島ヴォルティスが美馬市をはじめとする協働者の皆さんとともに取り組んできた「美馬市版SIBヴォルティスコンディショニングプログラム(VCPG)を通じ、のべ1,200名を超える地域の皆さまの健康づくりや、地域の皆さまの交流の機会にJクラブが関われていることを喜ばしく思います。
このプログラムは、Jクラブで初めてのヘルスケア分野のソーシャルインパクトボンドであり、多様なステークホルダーと連携して持続可能な活動となるように取り組んでいることが評価され、2020Jリーグシャレン!アウォーズにてパブリック賞を受賞しました。他クラブでも同様の取り組みがスタートするなど、シャレン!の大きな成果となっております。
今回のプログラムを終えた後も、健康づくりを担う取り組みが、様々な方々の尽力のもと今後も継続されることを伺っております。これからも地域の皆さまとともに、健康づくりを通した豊かな社会の実現を目指し、更なる発展に繋げていただければと思います。

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